ミステリ小説はお好きですか?
私は大好きです。 中でも印象深いのが、アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」という有名な海外ミステリ小説です。 高校生のころ寝る間を惜しんで翻訳版を読みましたが、結末に至ったとき1か所妙なところがあると気づきました。途中で犯人の独白部分があるのですが翻訳がおかしいため、読者が真相を推理できないという致命的な誤訳だったのです。 その後新訳が出版されましたが、この件で私が感じたのは、小説の翻訳には外国語に堪能であるだけでなく、確かな文脈判断をしながら表現していくことも大切になるということでした。いくら語学に堪能であっても、作者が創意工夫を凝らして用意した物語の結末と矛盾するような翻訳をしていてはストーリーが台無しです。
医学部入試においても同様のことがいえます。いくら数学や生物に長け、豊富な知識と判断力があっても、一人一人の患者さんの背景を理解し全人的に診ることができなければ、真に相手を「救う」ことはできないでしょう。その潜在能力を試されるのが小論文入試だと私は考えています。 翻訳に必要な文脈判断力や表現力、そして他者のおかれている状況を些細な言動から想像する力や全体的直観。これらは国語の学習を通して鍛えられる語彙力、読解力、想像力から生まれるものです。 若い世代にはこれらの力を磨き、育ててもらいたいと心から願っています。