吉田 統彦(よしだ つねひこ) <プロフィール>
東海高校を経て名古屋大学医学部卒、同大学院修了。前衆議院議員。眼科医。医学博士。愛知医科大学医学部客員教授。昭和大学医学部客員教授。名古屋大学医学部非常勤講師。名古屋医療センター非常勤医師。
現在の制度では、医師法第9〜16条に規定されている医師国家試験(毎年2月中旬ごろに施行)に合格し、医籍に登録をされると医師として患者の診療を行うことが出来るようになります。日本は自由標榜性であるために、医師自身の技量の判断により、何科を名乗っても良いことになっており、また日本国内であれば(一部の外国でも)どこでも医師として患者の診療を行うことが出来ます。これこそが大学医局中心のヒエラルヒーと教授および医局の人事権が弱体化した(加えて医師会の開業医に対する影響力の弱まった)現在において、医師の偏在と各科の偏在を引き起こし、医療過疎および地域医療の崩壊を招く主要因だと考えられています。今から記載する事はかなりの劇薬で、特に開業医の先生方や御子弟には若干厳しい内容も含みますが、あくまで医療を国家国民の財産として、そして国家戦略としての医療を考えた上での一案に過ぎませんので、ご容赦ください。その政策とは、おもいきって現在全国どこでも診療を行うことが出来る医師免許を、卒業した大学の存在意義と成り立ちに沿って、年限を決めた上で、診療可能地域を制限するという政策であり、これは大変有効に機能すると思います。要は自治医大や産業医大の義務年限と同じです。私の想定する年限は10年でその年限を経過すれば、全国で診療可能な医師免許に書き換えるという事になります。例えば、前述した田中角栄元首相の一県一医大構想で新設された医学部の卒業生の場合、全員が10年間はその大学がある都道府県において医療に従事します。私立大学も例外としてはなりませんので、一部の例外を除き、例えばある大学は特定の都道府県に特化して卒業生に医療に従事してもらう。もしくはある大学は全国に卒業生を医師として送り出すために、日本を数ブッロク(例えば北海道、東北、東京、東京を除く関東甲信越、東海北陸、関西、中国四国、九州のような)に分割して、そのブロック別に一定数の卒業生を送り出し、都道府県との協議を行い、卒業生を振り分けていく等というルールを作る事になるでしょう。勿論、いくら国家戦略だと言っても、行き過ぎた規制制度が日本の若い医師や研究者そして医療の可能性を制限してはなりませんので、アカデミアとしての機能を多く有し、国家の医療の基幹そして研究拠点となっている大学等の卒業生(及び全ての大学の極めて優秀な人材)は例外とするしかありません。それは例えば旧7帝国大学をはじめとした日本の医療と研究の中核となっている大学だと思います。この大学の取捨選択には過酷な競争が発生すると思います。それと共に、医療における研究拠点の集約は必須だと考えます。つまり米国をはじめとした先進諸国では国家戦略として医療や自然科学に関する研究機関の機能とデータの集約を行っているのですが、日本の研究の悪弊の一つとして、日本では至る所で同じような研究がおこなわれている事実があります。勿論競争を促すという意味では非常に大事な事ですが、多くの場合は人材やデータそして労力と研究費が分散してしまっているのが現状です。つまり全国の医学部付属病院を①医療(特に政策医療)及び研究の基幹となる大学病院②優秀な臨床医を育て地域の医療を守っていく事に特化した大学病院に二極化させ、研究費と人材及び研究機関を集約し強化していく戦略と同時に進めるのも一考に値するのではないでしょうか?
前衆議院議員 医師 吉田統彦拝