吉田 統彦(よしだ つねひこ) <プロフィール>
東海高校を経て名古屋大学医学部卒、同大学院修了。前衆議院議員。眼科医。医学博士。愛知医科大学医学部客員教授。昭和大学医学部客員教授。名古屋大学医学部非常勤講師。名古屋医療センター非常勤医師。
2012年7月厚生労働委員会で質問する吉田統彦先生
本稿では実際に私の予算委員会や文部科学委員会での質問を通じて、新設医科大学(以下、新設医大)の課題や問題点および医師の適正配置による医療過疎の解消及び各科のバランスの是正について考えていきたいと思います。
新設医大に関しての私が行った質問を要約すると
①日本で医療崩壊が起こった原因は単純な医師不足ではなく、各科の偏在と医師そのものの偏在こそが最大の問題ではないのか?
②医学部新設の認可基準は?医学部新設に関してまず、その必要性を良く考える必要があるのでは?既に既存の大学の定員増加によって13校分の新設医大を創立したのと同様の医師数を増加させている。
③であれば、将来にわたり、どの程度の必要医師数の確保を考えていくべきかの議論を優先させるべきでは? つまり人口が減少してきた場合の適正な医師数も現段階から考慮すべきではないか?
④既存の医学部の定員増だけで対応が出来るならそうすべきでは?
⑤新設医大の必要性が認められた場合も、その目的が地域医療の再生、特に医療過疎地域の再生にあるならば、当然、その大学及び大学病院の立地は熟慮すべきでは? どこに作るのか?
⑥加えて、新設された医学部はすべての入学枠を地域枠とするような、思い切った施策が必要では? その地域に根差した医師を育成するルール作りが必要である。 被災地枠、地域枠等は将来にわたる強制力のなさと枠外の学生との学力差が課題となってくるのでは?
⑦新設医大の教官はどこから連れてくるのか? その際に医療崩壊を助長しないか?
⑧そう考えると新設医大は何らかの利権と癒着の結果であり、一校当たりの新設医大の設立に100億円要するとなれば、血税の無駄遣いではないか?
⑨あくまで地域医療の強化単体で考えるならば、卒業生が9年間の義務年限は過疎地や離島での診療に従事する自治医科大学の大幅な定員増を地方自治体と協議の上で進める方が有効な施策では?
⑩現状のまま、地域医療を守る為のルール作りもせずに新設医大を設立するなら、幅広く人材をあつめ、様々な基礎的な専門性を持つような人材を確保する為にアメリカのMedical school型の新設医大、つまり4年制の大学を卒業した人材のみが入学可能な4年制の医学部を設立する方が有用ではないか?
実際にちゃんとしたルール作りをせずに現状のまま、医学部の定員を増加させようが、新設医大を設立しようが真の命題である医師の適正配置による医療過疎の解消と各科のバランスの是正は不可能であると確信いたします。
次号からは新設医大、医学部定員増加政策を本当に国民の為に、医療崩壊を食い止める為のものにする処方箋、および現状のままの医師数で医療崩壊を食い止める為の処方箋を考えていきましょう。
前衆議院議員 医師 吉田統彦拝
2012年7月厚生労働委員会