吉田 統彦(よしだ つねひこ) <プロフィール>
東海高校を経て名古屋大学医学部卒、同大学院修了。前衆議院議員。眼科医。医学博士。愛知医科大学医学部客員教授。昭和大学医学部客員教授。名古屋大学医学部非常勤講師。名古屋医療センター非常勤医師。
英国の保守主義はおそらく楽天的な進歩主義を批判するものとして生まれて、
発展していったのではないしょうか?
確かにバークはフランス革命の批判者であり、
ある意味では啓蒙思想に敵対した人物です。
しかしながらバークにとって、
“保守”とは、古いものをそのまま維持することではありませんでした。
彼は「何らか変更の手段を持たない国家には、
自らを保守する手段がありません。
そうした手段を欠いては、
その国家が最も大切に維持したいと欲している
憲法上の部分を喪失する危険すら冒すことになり兼ねません」
と述べると同時に
「相続という観念は、確実な保守の原理、確実な伝達の原理を涵養し、
しかも改善の原理をまったく排除しないということを、イングランドの民衆は熟知しています」
そして「私は変更をもまた排する者ではありません。
しかしたとえ変更を加えるとしても、それは保守するためでなければなりません」
とも述べています。
つまりバークが述べたかったこと
そして真の意味での保守の思想とは“大切なものを守り保つこと”であるのだと思います。
これはある意味で“保守するためには変わらねばならない”という
逆説にも聞こえる保守主義の信条を熟成することになります。
バークは清教徒革命と併せてイギリス革命を完成させた名誉革命は
まさに保守と修正により王国の古来の原理を回復したと考えました。
それに比してフランス革命は王国の過去の原理の回復ではなく
歴史的根拠をもたない抽象的な原理に立脚した歴史の明確な断絶であったと断じています。
バークは民主主義に敵対したわけではありません。
実際彼は下院が民意により支えられていることを強調しています。
しかしながら同時に国王自体は王国の時間を超えた連続性を意味し、
その地位の根拠を国民の選択に拠ることは認めませんでした。
繰り返しになりますが、真の意味での保守の思想とは、
“大切なものを守り保つこと”そして“そのために変わらなければならない”のだと思います。
アンソニー・クイントンは“不完全性の政治学”で
伝統主義・有機体主義・政治的懐疑主義の三原理を
本来の保守主義の思想を定義づける特徴として列挙し、
西部邁は“焚書坑儒のすすめ”で、
社会についての有機体説
・変化についての漸進主義
・認識についての懐疑主義の三幅対こそが保守思想であると述べています。
元衆議院議員 医師 吉田統彦拝