吉田 統彦(よしだ つねひこ) <プロフィール>
東海高校を経て名古屋大学医学部卒、同大学院修了。前衆議院議員。眼科医。医学博士。愛知医科大学医学部客員教授。昭和大学医学部客員教授。名古屋大学医学部非常勤講師。名古屋医療センター非常勤医師。
吉田統彦先生の『未来の医師養成講座』授業風景
アポロ病院は、
1983年にインド人医師のプラタプ・レディ博士(Dr Prathap C Reddy、1957年生まれ)が
チェンナイ市に創設したインド初の民間総合病院です。
1991年の経済自由化政策導入を踏まえた1990年代の新リベラル体制の下で、
ヘルスケアセクターの民営化が急展開し、
大都市圏を中心に民間のコーポレート病院チェーンが急増しつつありますが、
アポロ病院グループの持株会社は、
1979年に創設されたApollo Hospitals Enterprise Limited(AHEL)で、
インドのヘルスケア会社として初めてボンベイ証券取引所に上場し、
インド初のコーポレート病院として、アポロ病院グループは毎年1~2病院を新設し、
2011年現在では53病院、100クリニック、病床総数8,500床、専門医4,000名を擁する
アジア最大規模の株式会社形態の病院グループに成長しました。
私が以前勤務していたJohns Hopkins大学の国際提携部門である
Johns Hopkins Internationalと共同研究の契約も結んでおり、
病院チェーン網はインド国内の主要都市はもとより、
バングラディッシュのダッカやモーリシャスにも展開しています。
ニューデリーのアポロ病院がJCIから、
外国患者受入れに当っての国際基準適格認定を取得したインドの第一号病院となり、
2011年現在ではアポロ病院グループの6病院が認定病院となっています。
前述のようにアポロ病院グループに属する一部の病院の株式は公開されて、
高収益企業として高く評価されています。
グループの外国人入院患者は年間約1万人。
外来患者数は年間約10万人で毎年10%増加していると言われています。
渡航元は多岐に渡り、
米国、欧州(英国、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、ポーランド)、
湾岸諸国、ナイジェリア、ザンビア、ケニア、タンザニア、アフガニスタン、モルジブ、
パキスタン、バングラディシュ、ネパール、ブータンからの受診が多くなっています。
レディ博士がアポロ病院を創設したきっかけは、
当時のインドの医療水準では心臓移植はできず、
当時公立病院に勤務していたレディ博士は
担当患者に心臓移植を受けさせるために米国へ送り出しましたが、
手術前に死亡してしまったことです。
そこで、インドでも心臓移植を含めた高度な臓器移植を手掛けられるような
高度先進医療を担う病院を自らの手で創り上げたいと決心して創設したのが、
レディ博士によるアポロ病院設立の動機でした。
それから28年を経て、インドは心臓移植患者を米国へ送り出す国ではなく、
逆に米国から患者を受け入れる国に、
まさに180度大きく転換したのには隔世の感があります。
創設以降アポロ病院グループの中核であり続けるアポロ病院チェンナイは
インド政府から“Center of Excellence”賞を受賞し、
Week誌による過去3度にわたりインド最優秀民間病院として
ランキングされている60以上の部局から成るスーパースペシャリティ病院です。
2011年現在で実に27,000件以上の心臓外科手術で99.6%の成功率を誇り、
骨髄移植の成功率は70%となっています。
次稿はインドのMedical Tourismの締めくくりとして、
ニューデリーのアポロ病院についてご紹介したいと思います。
元衆議院議員 医師 吉田統彦拝