吉田 統彦(よしだ つねひこ) <プロフィール>
東海高校を経て名古屋大学医学部卒、同大学院修了。前衆議院議員。眼科医。医学博士。愛知医科大学医学部客員教授。昭和大学医学部客員教授。名古屋大学医学部非常勤講師。名古屋医療センター非常勤医師。
Medical Tourism(メディカルツーリズム)は医療観光、
医療ツーリズムとも表現される事がありますが、
一般的に居住国とは異なる国や場合によって地域を訪問し、
診断や治療などの医療サービスを受けることと考えられています。
またツーリズムとなってはいますが、
実際のツーリズムいわゆる観光は付随する事もしない事もあります。
そもそも古代から医療を目的とする旅行の歴史は存在します。
古代ギリシアのサロニカ湾アスクレーピオスの聖域への巡礼と療養は良く知られており、
また、日本の湯治や欧米でのスパやサナトリウムなどへの転地療養もその一部だと考えられます。
しかし現代のMedical Tourismは先進国の患者や発展途上国の富裕層が
1:自国よりはるかに安い手術代などの治療費
2:高度先端医療技術
3:法律上の問題などで自国では不可能な臓器移植や特殊な手術
4:観光と組み合わせた高度な医療機器による健康診断
等を目的として、他国に渡航して目的とする医療サービスを受ける事が主体となっています。
現在の渡航先としてしばしば選択されるのは主にアメリカなどで訓練を受けた医師が増加し、
欧米と遜色ない医療技術が非常に安価に受けられるインドやシンガポール、タイ、マレーシア、メキシコなどです。
以前 LASIKや美容整形が日本より安価だという事で
一時期多くの日本人が渡航し医療サービスを受けた韓国も国家戦略の一つとして力を入れています。
しかしこういった現代のMedical Tourismは最近発生したものではなく、
例えば第二次世界大戦後、
中近東の特に産油諸国の王族はその多くは欧米での医療を選択してきましたし、
近現代の国家元首もしばしは最良の治療を受けるために海外での治療を選択し、
結果として国家元首の海外療養中にクーデターが発生する事も頻繁にみられます。
最近打倒されたカダフィ政権も1969年、
時のリビア国王イドリース1世のトルコでの病気療養中にカダフィら将校たちによるクーデターが起こり、
王制は打倒されました。
同様に近年タリバン勢力が跋扈するアフガニスタンも1973年、
国王ザーヒル・シャーがローマで病気療養中に軍部のクーデターが起こり、王制廃止となりました。
次稿以降では、活発化するMedical Tourismの現状とその展望、
その成立条件、各国の状況と日本のおかれた状況と可能性を考察していきたいと思います。
元衆議院議員 医師 吉田統彦拝
セント・メプレス主催『吉田統彦の未来の医師養成講座』より