そんなわけで
ひたすら勉強に打ち込んだ僕の受験生ロードであったが
ふとロードサイドに目をやると二輪の花が咲いていた。
淡い色の花ではあったが
その記憶は鮮明だ。
もっと言うなら
受験生時代全体の記憶が鮮明だ。
十年を一昔と言うなら
僕にとって受験生時代はほとんど昔、昔、昔、昔の物語だ。
なのに
目を閉じればまぶたの裏に
まるで昨日のことのように蘇るのはなぜだろう、
当時を懐かしむ心が今の僕にあるからなのか。
青春時代への憧憬が生まれる年齢になったからなのか。
いや、そうではない。
とことん、徹底的に、これでもかとばかりに
命を燃焼させた半年間だったからだ。
それはまた未だ見ぬ自分との遭遇が連続する日々でもあった。
この半年間の通過儀礼を経て
僕は少年を脱皮し青年になった。
たかが棒ふりと野球を嗤う人は少なくないとしても
イチローを嗤う人はめったにいないだろう。
同様に、たかが受験と嗤うこともできようが
だからといって
真剣に頑張っている受験生を嗤うことはできないだろう。
人生のいかなるステージに立とうとも
胸を張れる自分であるために
受験生時代は恰好のエチュードとなりうるものだと思う。
完
プリティ中野