学部は文学部と決めてはいたが
作家になるのに文学士号が必要だなどと考えていたわけではもちろんない。
だいたい文学などというものは世俗的価値観に染まってできるものではない
ということぐらいはわかっていた。
だからといって大学に進まず巷間に飛び出して
たとえ身過ぎ世過ぎであろうと
自分の力で生き抜きながら
文学賞を虎視眈々と狙うほどまでに
不退転の覚悟を定めていたわけでもなければ
それができるほどの自信や展望をもっていたわけでもなかった。
どこにでもいる高校生。
少々文学かぶれの高校生に過ぎなかった。
さて一口に文学部と言ってもその領域は多岐にわたる。
国文科、哲学科、史学科といったところが最初に頭に浮かんだ。
そのどれかを選ぶことになるのだろうと思っていたのだけど
心の奥で、どうも地味だな、どれもこれも、とつぶやく声があった。
悩んだ末に結局僕が選んだのが
自分の中ではダークホースの英文学科だった。
正直言って、理由は一つ。
欧米の文学を原書で読んでみたいと思ったことも事実だったが
国文科よりも哲学科よりも史学科よりも
キャンパスライフに華やかさが漂っているような気がしたからだ。
やっぱり僕は普通の高校生男子だった。(続く)
プリティ中野