総じて僕の受験生時代は楽しいものだった。
傍目から見たら一生懸命で大変そうに見えたかもしれないが
一生懸命は楽しいし幸せなことに違いないから
どう考えても楽しい日々だったのだ。
もちろん切り捨てたものはいくつもあった。
好きなテレビも見ず
読みたい本も読まず
あ、いいなと思う女の子がいても横目でみて
ただひたすら机に向かった。
あ、あ、あ
嘘をついてしまった。
白状すると
テレビは週に一度
土曜日夜8時のプロレス中継だけは欠かさず見てた。
それから一人だけ
いや二人だけ
好きな女の子がいた。
一人は府立豊中高校の3年生
もう一人は被昇天高校(現在の聖母被昇天高校)の2年生
どちらも池田市立図書館で知り合った。
豊中高校の子は清楚なビューティだった。
図書館が閉館になるとよく一緒に帰った。
といっても彼女の家まで歩いて5分ほどだったのだが。
被昇天の子は少々大人びたところのある文学少女で
長い睫毛がチャーミングだった。
彼女は僕に文庫本をくれた。
梶井基次郎の『檸檬』だった。
こんなことよく覚えているな、自分よ。
彼女たちは僕のことを覚えてくれているだろうか?
もう一度会ってみたい気がする。
あの日に戻って・・・
プリティ中野