ひどいイビキだった。
この世のものとは思われぬ
あの世のものとも思われぬ
爆音轟音爆音轟音爆音轟音そして爆裂音
じゃ、おやすみ、と言って電気を消した一分後に
超大型爆撃機が飛来したのだった。
まさかあのようなイビキボムが小柄でやせっぽちのKから
朝まで6時間も連続投下されようとは
夢にも思っていなかった僕だった。
わずか半年間とはいえ
これまでの苦労が水の泡になると思った僕は
やおら立ち上がり電気をつけた。
部屋を明るくすればKは起きると思ったのだ。
ところがイビキのマグニチュードは一向に小さくならない。
しかたがない、最後の手段だ。
Kの顔をまたぐように仁王立ちした。
そして右手を高々と振り上げ
渾身のビンタを音源というか震源地というか
Kの顔面に食らわそうとタイミングをはかったのだが
ついに僕の右手が振り下ろされ
快音を発して爆音のスイッチを切ることはなかったのである。
Kの寝顔が天使のそれのようだったから。
天使の寝顔で悪魔のイビキ。
結局僕は
Kが天使か悪魔か見極められないまま
まんじりともせず朝を迎え
阪急電車に揺られながら
最悪のコンディションで受験会場
京都は烏丸今出川に向かったのだった。