プリティ中野と名古屋大学医学部の3人(左から花城勇人君、岡本尚樹君、森澤淳司君)
朝晩に急に冷え込むようになり、
早くも本格的に冬の到来を感じさせる日々が続いていますが、
みなさんいかがお過ごしでしょうか?
受験界では年内中の推薦入試が始まってからもうしばらく経ち、
センター試験も刻一刻と近づいてきている非常に大事な時期でありますので、
特に受験生は体調管理に気をつけてほしいですね。
さて、今回は体調管理に関連付けまして、
この冬の時期に流行するインフルエンザについて解説していこうかと思います。
また、インフルエンザウイルスは高校生物で学習する項目にもなっていますので、
生物選択者のために少し生物の知識も織り交ぜながら話を進めていきます。
まず、インフルエンザという感染症は、
インフルエンザウイルスの感染によるかぜ症候群を指します。
かぜ症候群とは、主にウイルスによって起こる呼吸器疾患のことで、
この中にはいわゆる「風邪」や、インフルエンザなど様々な種類があります。
つまりは広く言えばインフルエンザは風邪の仲間だということですね。
インフルエンザウイルスにはA・B・C型の3種類があります。
ヒトに感染するものとしてはA・B型が多く、
A型は変異しやすいため世界的大流行を起こしやすい一方、
B型は比較的変異しにくいので地域に限局的な流行しか起こしません。
もちろん、インフルエンザA型が毎年のように世界的大流行を起こす、
ということではありませんが、
最近で言えば鳥インフルエンザ、過去にはスペイン風邪として大流行しました。
インフルエンザはただでさえ感染力が強いのに、
さらに重篤な症状を引き起こす新しい変異型のウイルスが流行することがあるのですから、
非常に厄介な疾患であることがお分かり頂けたかと思います。
次にインフルエンザの具体的な症状に移ります。
高熱、頭痛、関節痛、倦怠感、咳、鼻水などを起こすのが典型的な経過ですが、
まれに非常に危険なインフルエンザ脳症という合併症を起こすことがあります。
脳症というくらいですから、
インフルエンザウイルスが脳に侵入し神経にダメージを与え、
後遺症を残します。
ただ2、3日間高熱を耐えればそれで済む、
と思っていたら大間違いの非常に怖い病気なんです。
ここで、インフルエンザの治療薬について少し高校生物を絡めながら話をしておこうかと思います。
インフルエンザがヒトの細胞内に進入する際、
HA(ヘマグルチニン)が細胞表面のシアル酸を吸着することで侵入が可能になりますね。
逆に、細胞内で増殖した後、細胞から飛び出して行きたいわけですが、
このHAがシアル酸と結合してしまい離れられなくなります。
この時に働くのがNA(ノイラミニダーゼ)でしたね。
NAはHAとシアル酸との結合を引き離し、
インフルエンザウイルスが細胞から巣立つのを助けます。
高校生物の中では非常に混みあった複雑な範囲になりますが、
きっちり暗記していきましょう。
さて、インフルエンザの治療薬の中にNA阻害薬というものがあります。
これは名の通り、インフルエンザウイルスが細胞から離れる際に働くNAを阻害することで、
インフルエンザウイルスが細胞から離れられなくする、
つまりそれ以上感染が広がらないようにすることを目的とした薬なのですね。
ここで一つ注意していただきたいのは、
NA阻害薬など多くの抗ウイルス薬がウイルスそのものを殺す薬ではなく、
増殖を抑える程度の効果しかないといことなのです。
では抗生物質は一体何に対しての薬なのかというと、
これは細菌に対する薬なのです。
細菌とウイルスの違いは言えますか?
高校生物範囲なので復習しておいてくださいね。
今回はインフルエンザについて語ってきました。
次回からは血液内科、消化器外科など、科ごとの基礎的な内容を語っていきたいと思います。
名古屋大学医学部4年 花城勇人