先日、韓国でのMERS大流行が世界中を震撼させる一大ニュースとなった。
普段はニュースの話などしない医学生の僕らも、
この話題にはすぐさま飛びついて口々に議論した。
こんなにも名大の医学生が外の世界に関心を向けるのは、
STAP細胞の(嘘)発明以来であり、医学を志した学生の集団であることを久々に実感した。
今回はMERSについて一通りの知識を共有したいと思う。
まず、MERSとは、Middle East Respiratory Syndrome 、
中東呼吸器症候群の略称である。
MERSコロナウイルスの感染によって発症する感染症で、
2012年に中東のサウジアラビアで初めて観測された呼吸器疾患であることからこの名がついた。
致死率は4、50%と非常に高く、自覚症状は少なく、
肺炎様の症状が突然発症することから非常に重篤な疾患であることがわかる。
ところでMERSと似た名前でSARSという感染症が2002年ごろ流行したのを覚えておいでだろうか?
これは同じくコロナウイルスによるものだが、
コロナウイルスのなかでも別種のウイルスによるもので、
致死率も10%程度と低かった(致死率10%は恐ろしい疾患であるが、MERSと比べれば低い、というだけに過ぎない)。
致死率の比較的低いSARSでさえあれだけの騒ぎになったのだから、
今回のMERS流行がいかに危機的な状況かはお分かり頂けるであろう。
緩慢な対応で後手後手に回りMERSの感染拡大に見事に失敗した朴政権も
反日運動などしている場合ではないと強く訴えたいものだ。
MERSの自然宿主はコウモリやラクダであるとされているから、
これらの動物には近づかないことが最重要だ…日本に生息していればの話だが。
(ウイルスや細菌がある動物の体内で感染、生活していても、その動物には疾患を起こさない場合、
その動物のことを自然宿主という。
有名なO-157、腸管出血性大腸菌は、牛を自然宿主とし牛には何の害もないが、
これがヒトに感染すると出血性大腸炎という重篤な疾患をきたす。)
今のところ韓国内にMERSに感染した外国人が入国したという情報はないから、
自然宿主と接触した可能性は否定できず、
韓国の人々が一体どんな生活を営んでいるのか非常な興味がある。
さて、ここからは少し高校生物の話に絡めてMERS問題を捉えていきたい。
今回のMERSの病原体はコロナウイルスであることは先に述べた。
つまりはウイルスによる疾患なのである。
ここでまず、「ウイルスと細菌の違い」について学んでおきたい。
ウイルスは自己増殖できず、感染動物の細胞内に寄生して生活するのに対して、
細菌は自己増殖でき、細胞外で生活する。
ウイルスは生物とすら呼べず、疾患を起こす無生物=単なる物質の集合体ととらえた方が適切だ。
細菌は細胞外で生活するため、薬が効きやすいが、ウイルスはそもそも薬が存在しない。
したがって、今回仮にMERSがパンデミック(世界的大流行)を起こした場合、
特効薬の開発が難しいため、事態は相当に深刻だ。
今回はMERSについて述べてきたが、これから受験を控えている、
というよりまだまだ残り長く人生が続く受験生の皆さんが、
夏休みに韓国旅行に行ったりコウモリやラクダと触れ合わないことを切に願う。
名大医学部3年後期の基礎医学セミナー研究発表会口頭発表部門で見事2位に輝いた花城君は後列右から3人目。