吉田 統彦(よしだ つねひこ) <プロフィール>
東海高校を経て名古屋大学医学部卒、同大学院修了。前衆議院議員。眼科医。医学博士。愛知医科大学医学部客員教授。昭和大学医学部客員教授。名古屋大学医学部非常勤講師。名古屋医療センター非常勤医師。
前稿までで述べたタイの首都バンコクのPublic Sectorの雄である
国立チュラロンコン大学医学部付属病院や
Personal Sectorのファーストクラス病院の代表である
バンコク・ジェネラル病院そしてあまたある病院群は、
例えて言えば豪華なリッツカールトンホテルからカプセルホテルまでの
大きな格差があります。
そういう意味では日本の病院は総じてリーズナブルで
平等なサービスが保証されたビジネスホテルの様だとも言えます。
一般的に海外の保険医療制度と比較し、
日本の国民皆保険は素晴らしいと言えます。
日本の医療保険は特に平等性やアクセスビリティという観点では
間違いなくダントツの世界一であると断言できます。
しかしながら、医療をグローバルな輸出財とみた場合は
日本の医療制度は鎖国状態とも言えるでしょう。
確かに地方の中核病院や大規模介護施設は雇用を促進し、
地域を活性化している側面があります。
つまり地域によっては病院が重要な基幹産業になっています。
ただしこれは、
あくまで内需拡大という面での国内産業という意味においてと限定されます。
その良い例が千葉県鴨川市の亀田総合病院や
福岡県飯塚市の麻生飯塚病院であると言えます。
現時点で日本の医療を輸出財と考えた場合、
現状では医療レベルが高くかつ人件費が安い
タイやインドに敵わない可能性が高いと思われます。
しかしながらそれでもなお
日本でもMedical Tourism の活性化に注力をしていくことは
外貨獲得による日本経済の活性化を誘導するための
一つの手段かもしれません。
そう考えた場合、
例えば様々な規制を緩和した医療特区の「出島」を設置するという
日本的には甚だ大胆な手段も
アジアにおける病院国際競争を勝ち抜くためには必要になってくると思います。
そのような状況下で行政に目を向けると
内閣府と経済産業省は大いに乗り気であり、
反面厚生労働省と医師会は現時点では慎重もしくは反対のスタンスのようです。
我々はどちらの道を選択すべきなのでしょうか?
勿論、日本におけるMedical Tourism の活性化は
期待されるほどの外貨獲得手段となるかは疑問が残りますし、
更には医療ビザの問題・病院職員の語学の問題・外国文化や宗教などへの理解の問題
・・・・・等と課題は山積しています。
またMedical Tourism後発国の日本はどのような戦略を立てていくべきでしょうか?
日本では、2009 年12 月にメディカルツーリズムが「新成長戦略」に盛り込まれました。
現在、正確な数値はありませんが、
推測による日本における外国人の医療機関受診者数は
4万から5万程度ではないかとされています。
しかしながら日本政策投資銀行の調査によると
日本国内のMedical Tourismの潜在的な市場規模は
2020年で約5,500億円と推計され、
経済波及効果は約2,800億円にも上る可能性があるとされています。
この調査は海外からのMedical Touristを約43万~45万人と見込んでいます。
次稿ではもう少し日本のMedical Tourismの可能性を考察していきたいと思います。
元衆議院議員 医師 吉田統彦拝