今年度の受験もだいたい終了しました。生徒の皆さん、お疲れ様でした。
講師という仕事を始めて既に約20年、
さまざまな生徒に会うことができ、幸せに感じています。
私は主に個別での指導をしていて、より密接に生徒に接し、
その言動や変化をつぶさに観察する機会が多いため、
毎年毎年新しい発見があり、それが大きな喜びです。
生徒が珍しい間違い方をしたときなど、
「こういう間違い方があるのか…」とひそかに感心しています。
頭の固い年齢になってしまった私などが思いもつかない柔軟な発想をする生徒もいて、
驚嘆することも少なくありません。
そんな生徒の言動も機会があれば紹介していこうと思います。
今回はその1つ目です。
『定理って要するにショートカットですよね』
数学を指導しているときに生徒が言った言葉です。
これだけでは何を言っているのかわからないので、以下はその解釈。
例えば、三角形の外接円の半径を求めるには正弦定理を使いますが、
使わなくとも円の中心から三角形の頂点に補助線を引けばよい。
同様に余弦定理を使うべき場面では、
定理を使わずに三角形の頂点から垂線を下ろして三平方の定理を使えばよい。
その三平方の定理を使うのも嫌ならば…。
つまり、定理を証明するときと同じように補助線を引けば、定理を使う必要はないことになります。
逆に言えば、「補助線を引いて…」という一連の過程の中から頻繁に使うものを取り出し、
そこから得られる結果を定理として確立し、問題を解く際には、
その一連の過程を“ショートカット”して、結果のみを用いているわけです。
(ほかの単元でも同じ)
要するに、理論上、数学の問題を解くうえで、定理は一切必要ないのです。
受験に必須と言われる「解法パターン」も同様。
ただ、毎回毎回その一連の過程を経る労力を省くために、
定理や「解法パターン」が存在しているのです。
誰かに教えられたのではなく、自力でこのことに気付いたこの生徒はたいしたものですね。
紅萌ゆる吉野先生の名講義