吉田 統彦(よしだ つねひこ) <プロフィール>
東海高校を経て名古屋大学医学部卒、同大学院修了。前衆議院議員。眼科医。医学博士。愛知医科大学医学部客員教授。昭和大学医学部客員教授。名古屋大学医学部非常勤講師。名古屋医療センター非常勤医師。
医療崩壊の原因の一つとして、
各診療科において勤務医師数と開業医師数のアンバランスが指摘されます。
特に医療過疎地域においては、医師数そのものも少ないのですが、
勤務医師不足の為、その地域の中核病院の診療科の維持が困難となり、
その結果医療圏の維持が困難となっていることが多い訳です。
その理由は、第一に医局による医局員の統制がきかなくなっている、
つまり若い医師たちは医局(教授)から望まない土地及び病院での勤務を命じられると
①辞令を拒否する
②条件として短期間での配置転換を望む、もしくは
③その事例を不服として開業をする、
というおよそ20年前にはあり得なかった事象が頻繁に起きるようになったからです。
また、外科などの診療科では全国的な勤務医師数の減少により、
外科医療の崩壊を招いており、
今後、多くの経験を有し高度な手術をすることが出来る外科医師の数を維持できなければ、
日本の世界最高水準の手術技能は絶滅していく可能性があります。
特にこういった現象は産婦人科、集中治療や麻酔科を含む救急医療など高度な医療
(場合により高価な医療?
つまり極めて高価な医療機器等を要する診療科や複数の医師等高度なチーム医療を必要とする診療科)
を必要とする診療科においてその傾向が顕著になります。
簡単に言えば、後輩を指導し、
どのような状況でも最適な判断と処置ができる所謂一人前の技術を得た途端に、
もしくは最も技術と体力が充実している時期に勤務医を辞めて開業してしまうという事です。
高度な外科手術等は開業医師として行う事は一部の例外を除いて大変に困難であり、
国家国民にとって大変な損失であるのは言うまでもありません。
また外科や産婦人科等の場合、
そのWork Life Balanceの悪さ(要は過重労働)やValue for Moneyが低い(労働の割に給与が少ない)
が勤務医師を辞めてしまう主な原因であるのは明らかです。
本稿及び次稿では、この課題に対しての処方箋を考えて参りたいと思います。
第一の処方箋は単純に勤務医師の待遇改善です。
要するに一生勤務医師を続けようと多くの医師が思うような待遇にするという事です。
民主党政権時代に、外科・小児科・産婦人科・救急医療の再建と勤務医の待遇改善策が多く取られ、
診療報酬を改正し、基幹病院や大学病院の収益は劇的に改善し、
現実に勤務医の給与や勤務環境等の待遇改善が実現しました。
その結果、医療崩壊がようやく止まり、
WHOが世界最高と評価する日本の医療の維持に見通しがついてきた。
しかしながらその矢先に政権が変わり、
再び自民党政権下での大マイナスの診療報酬改定により、
ほとんど全ての大学病院や基幹病院の収支は赤字に転じてしまいました。
これでは元の木阿弥ですので、
永続できる予算配分や診療報酬改定による勤務医師待遇の
大幅な改善を目指さなければなりません。
元衆議院議員 医師 吉田統彦拝