中学生ともなれば、二人に一人はスマホを持つ時代となっている。2010年頃から脳科学者たちは、子供のスマートホーン使用についてある警鐘を盛んに訴えていた。
2016年から始まった文科省の小中高校学力検査の結果を利用してのスマホ利用についての功罪を纏め始めた。その結果、スマホ利用と知的、学習の効果などを分析結果が報告された。
過度なスマホ使用生徒の知的、学習取得効果は、スマホ1時間以上の使用者は、脳への負担が深刻な「スマホ認知症」となると結論づけている。
スマホから毎日膨大な量が脳に入り込み、記憶中枢にオバーフローを起こすというのである。「脳過労」となって情報の処理能力が低下し、もの忘れ、うっかりミスが多発し、脳がそのまま侵され「鬱病」を患ったりして、ついには「強度の認知症」となると警告している。高齢者ほどそのリスクは高くアルツハイマー認知症となり易いと指摘している。
小中高校生のスマホ利用の影響をについて詳細を追ってみることとする。
図・1 勉強中のアプリの使用頻度と成績 | 図・2 勉強中に使用するアプリ数と成績 |
※平成28年度小5~中3スマホ所有者(東北大学・仙台市教育委員会の調べ) |
東北大学・加齢医学研究所長・教授の川島隆太先生は、仙台市教育委員会との9年間に及ぶスマホが子供の「脳」に与える影響を追跡調査し分析した。
スマホ依存症は怖い病気
もう少し詳しく脳科学者の知見を尋ねてみます。アプリは、ライン等SNSが要注意です。メッセージのやり取りを行う人と繋がりあう同時双方向性のあるものを長時間使うのはよくない。勉強したくてもできるような状態に「脳」がならない。SNSを多く使うことで「脳」がマルチタスキング(複数の物事を同時に行うこと)となり、集中力が途切れてしまうと指摘しています。
「灰白質」とは、大脳や小脳の神経細胞層のこと。大脳は思考や記憶、小脳は運動の制御を司っている。発達期にある筈の子供の「灰白質」が増えないとなれば、「脳」の中であらゆる命令を出す神経細胞そのものが発達しないことになります。
「白質」は、神経線と言って神経細胞から情報を送る電線のようなもののこと。これが増えなければ、「脳」の神経細胞を繋ぐ電線が発達せずネットワークが劣化してしまいます。
スマホの長時間使用における学力低下の原因は、「脳」の未発達にあることがハッキリします。
高校年生の25%は、スマホを休日に6時間以上使用していることが文科・厚労両省の調査で分かった。この調査は、子供の生活や学習の状況などを継続的に調べるために全国の2001年生まれの子供を対象に毎年実施している。17回目の2018年の調査では、高2に当たる17才25,000人から回答を得た。
(2019・8・31 中日新聞社・朝刊から)
3時間以上4時間未満19.9%、6時間以上19.0%で、3時間以上が全体の65.4%を占めている。
スマホ使用1時間未満の者では、「勉強をしない」と答えた者14.8%であった。
6時間以上使用者では、「勉強をしない」と答えたものは55.3%であった。
1 使用時間はトータル1日1時間以内にする。使わないときはスイッチを切る。
2 「脳」を休める。キチンと寝る。就寝一時間前にはスイッチを切ること。寝ながらスマホはもっての
ほかである。⇒ 「脳」に疲れを溜めないようにする。
3昼の受験生の勉強中でも 、可能な限りIT機器(パソコン、携帯、電子機器など)を使わない。
4「 ぼーっとする」5分間くらいの時間を作る。
5 「マルチタスク」を止めて「ものタスク」(一つに集中)にする。
表 勉強中のアプリ使用頻度と成績(偏差値)
いつも使う | 時々使う | 殆ど使わない | |
ライン | 45.4 | 48.3 | 51.6 |
動画 | 45.9 | 48.5 | 51.8 |
ゲーム | 45.9 | 47.8 | 51.7 |
音楽 | 47.0 | 49.9 | 51.8 |
勉強中に使用するアプリと平均偏差値
〇 スマホと「手書き」は、「脳」の働きが違う
(1)認知症の予防
老排出物を脳から排出する仕組みは、睡眠中に働きます。睡眠時間が短いとシステムの作用間も減って、アミロイドβ排出の効率が下がります。人が起きて活動している間、脳に老廃物が作られます。すいみんちゅうに、脳がクールダウンしている時に掃除のシステムが働くと言うのです。根だめをするから大丈夫と考えている人がありますが、根だめは眠気をなくすだけで脳内の老廃物やストレスホルモンの除去、代謝系や自律神経家へのダメージ軽減は図れないの言われています。
平成29年度厚労省「国民健康・栄養調査」によれば、1日の平均睡眠時間が6時間未満は国民全体の40%で最も多い年代は40台で50%に上る。40代、50代の働き盛りが睡眠不足の世代であることが分かった。アミロイドβが脳に蓄積し始める世代である。
夜しっかり寝て、昼寝は、30分以内。60分以上の昼寝をする人はリスクが高いことも分かった。
手書きの効用
パソコンタイプやスマホ、を使用する機会が多くなり、手書きをすることが減ってきました。認知症症候群とならない為には、手書きを復活させることを長谷川嘉哉先生((認知症専門医)は、提唱しています。指先を決められている通り動かしているだけでは、「脳」は働かない。手に鉛筆やペンを持って指先を繊細に動かします。幹事、カタカナ、ひらがなを認識する「脳」の部位もそれぞれに異なっています。各文字の配列や大きさを整理する空間認識力も使わなければなりません。40代、50代であれば堪えずメモをしたり、纏めものを文章にすることも日常の習いですからツールとしてパソコンタイプやスマホを利用駆使することは、必要なことで、脳の部位や空間認識力を働かせるに役立つと考えられます。65代ともなれば、その必要性は薄らえてくる。
いわゆるボケ防止には、積極的に手書きでメモをすることを勧めます。
ノートに書くだけで「回想療法」と同じ効果がある。本日の日付、曜日、天気を始め、見たTVの題名、朝昼夜の食事メニュー、あった人、どんな話をした等。全体を5行くらいでよいとされています。少し慣れてきたなら、1日の出来事を短文でまとめるともっとよい。
令和3年4月から全国小中学校で従来の紙ベースの教科書に代わってデジタル教科書となる。令和元年からデジタル教科書は解禁されていたが、授業時数の1/2未満という市校であったが、本年からは、デジタル教科書を本格的に導入するとして、学校のパソコン端末の一人1台の配布を目指しています。
2014年から佐賀県武雄市と東洋大学と共同でデジタル教科書を授業に導入(スマイル学習)しその効果を検証する研究がなされています。学年、科目、単元のみでの学力の相関関係は、効果については明らかではないが、明確な効果は認められないと言う報告がされています。平成14年度の小5における算数のスマイル学習実施率と、実施前の成績との変化率の相関を分析した結果、相関関数は0.20697となり正の相関関数は見受けられなかった。
国立情報研究所新井紀子教授によりRST(Reading Skil Test)という子供の読解力を計測するテストが大規模に実施された。そのテストで日本の子供の読解力に問題があると指摘された。RSTはこどな読解力を調査するテストではなく非常に基礎的な読解力を調査するテストである。
以下の問題から、今の子供に危惧する問題を提起しておられます。
Alexandra の愛称は ( )である。
① Alex ② Alexasander ③ 男性 ④ 女性
正解:①の「Alex」
考察 正解は、①のAlex です。中学生全学年(235名)の正解率 38%、高校生(432名)65% であった。
この一見簡単な問題が出来ていないのです。中学生の6割り、高校生の3割が不正解だったと言う結果でした。このことから中高生たちは教科書が読めない生徒が多いと言うことが分かった。新井教授は、基本的な読解力は読書量とあまり関係がないと言っています。これは生徒たちを取り巻く環境の変化であると見立てています。
2011年に日本数学会では、大学1年生を対象にした『第一回大学生数学基本調査』を実施しました。その結果、大学生の論理的思考力の低さが明らかとなっています。
(1)男の子はみんな帽子をかぶっている。
(2)帽子をかぶっている女の子はいない。
(3)帽子をかぶっていて、しかもスニカーを履いている子供は、一人もいない。
正解:(1)の「男の子はみんな帽子をかぶっている。」
考察 正解は、(1)の「男の子はみんな帽子をかぶっている。」
全体の正答率は64.5%、国立大Sクラス(高偏差値群)の正答率は86.5%、私大Sクラスの正答率は66.8%であった。
新井教授は、学生は「sin x をxについて微分すると?」と訊くと「cos x」と即答します。「微分って何か説明してください。」と訊くと答えられない学生が多数ですし、「sin xを微分するとcos xになることを示して?」と訊くと答えられない学生がさらに多くなります。つまり大多数の学生は「マニアルを暗記して、その通り計算しているだけ」であると言うことです。
学力とは、‘学ぶ力’であり、真の学力が身についていなければ、変化の激しい世の中についていくことが困難です。デジタル教科書を始めとするICT 教育で論理的思考力を育てるのは、その特性上無理があると考えられます。
(週刊新潮「小中学生の親必読」上智大学理工学部情報処理工学科教授 辻 元)